長野県北信地域に伝わる郷土菓子の「やしょうま」。
お釈迦様へのお供えとして、さまざまな形や色の餅菓子が伝わっています。
坂井郷土食研究会がつくるものは、美しい図柄が身上。
冬の農閑期に女性たちが寄り合い、手をかけ、時間をかけてつくります。
写真=矢郷桃 文=編集部
米粉でできたお供え物
福寿草、ぶどう、松…。細密につくられた美しい絵柄は、すべて米粉でできている。お釈迦様が亡くなった旧暦2月15日の涅槃会につくられる「やしょうま」は、長野・北信地方に伝わるお供え菓子で、やしょうま、やしょんま、やしょ、おみみだんご…北信地方の中でもいろいろな呼び名がある。富山県の涅槃団子、岐阜県の花くさもちなど、涅槃会にお供えするお菓子は、いずれも米粉を使い、色鮮やかなものばかり。どうして米粉?と思うけれど、白い米もそれからできる米粉も、昔は普段食べることのできない、貴重なごちそうだった。これを使ってつくるお供えは、先祖や仏様に感謝し、日々の暮らしの安寧を願う人々の特別な思いがこもったものなのだ。
のし板、のし棒に包丁が三種の神器。あとは手を器用に使ってさまざまなパーツをつくる
通常メンバーは60代から80代まで12人のお母さんたち。この日は9人が集合。やしょうまづくりは11月〜4月に行なっている