“房州うちわ”を知りたい!|突撃!うかたま調査隊

「突撃!うかたま調査隊」は「うかたま」の新人編集部員が、気になることを調べるため各地にお邪魔させていただく、突撃訪問企画です。

文・写真=編集部

「うかたま」75号(2024年夏号) 掲載

駅から事務所まで徒歩15分。出社後はうちわをあおいで涼むのが日課。

どこかでもらったプラスチック製のものを使っているけれど、毎日使うからちょっといいやつがほしい。調べると千葉県に産地があり、「房州うちわ」というらしい。

さっそく工房を訪ねた。

訪ねたところ
うちわの太田屋
千葉県南房総市富浦町多田良1193
☎ 0470-33-2792 http://ota-ya.net

 千葉県南房総市にある「うちわの太田屋」は房州うちわの製造元で、伝統工芸士の太田美津江さんが営む店だ。

うちわをつくって48年。うちわの太田屋4代目 太田美津江さん

 竹の丸みを生かした柄、柄から面までの骨組みが立体的なのが特徴で、京都の京うちわ、香川県の丸亀うちわと合わせて〝日本三大うちわ〟と呼ばれる。なぜ房総でうちわづくりが盛んなのか太田さんに聞くと「ここは材料の女竹の産地。このあたりの竹は節間が長く、しなりがいいんです」と教えてくれた。もとは江戸でつくられるうちわの竹の産地だったが、関東大震災や戦争の影響で職人が房総に移り住み、ここでもつくられるようになったという。太田屋もその一軒だ。

 うちわづくりは、まず竹の表面を磨き、カッターなどの刃物で割いたら、それを糸で編んで骨組みをつくる。紙や布を張って完成だ。細かい作業を含めて21以上になる工程を経て、やっと1本のうちわができる。さっそく〝割き〟を見せてもらう。

カッターで8等分に割いたら、それを6、7等分してさらに骨を細くする。このとき内側の余分な部分はそぐ。内側をそぐとのりと紙の接着面が広くなるので、きれいに張れる

 専用の台に竹を立ててセットし、刃を竹の切り口に差し込んで2回くらいぐっと力を入れると、スッときれいに割けていく。無駄のない動きに圧倒されるうちに、竹はあっという間に茶せん状に! たぶん5分もかかっていない。

竹を糸2本で編み、立体的な骨組みをつくる。糸を均一の力加減で編むのがコツ。骨組みが見える部分を“窓”と呼ぶ

 「大事なのは割きやすい竹を手に入れること。きれいに割ければ、編みも紙を張るのもうまくできます。割きでは親指のつけ根、とくに左手に力がいるんですよ」と両手を見せてくれた。親指の関節がぼこっと張り出ていて、素人が見ても長年技を磨いてきた人の手だと伝わってくる。説得力のある手でとてもかっこいい。 

骨組みに張るゆかた地。自分の好みで選ぶと色や柄が偏るので、問屋に選んでもらい、いろんな系統のうちわをつくる
和紙を張ることが主だったが、先代がゆかた地を使うことを考案、人気商品に
靴屋で使われる革や布を切る機械を導入。骨組みや紙、布を刃型の下に置き、圧力をかけて押し切る。60年以上現役

 以前は20人以上の職人と作業を分担していたが、今は太田さんの他に2、3人だけ。でも、うちわ職人を目指す入門講座を10年前から開講していて、受講生の中から職人が生まれている。「数年したら、房州うちわの伝統工芸士が5、6人増えると思いますよ」と笑顔。

 いろんな人がいると新しいアイデアが出て、刺激をもらえて楽しいという。「房州うちわのこれからは明るいです」という頼もしい言葉を聞き、まずはホームパーティーですし飯をつくりながら、友人に房州うちわを普及しようと決心したのだった。

調査報告!

うちわは竹の特徴を生かして、職人の手でひとつひとつ丁寧につくられる。プラスチック製より柄が持ちやすく、しなるから風がやわらかい。

店頭に並ぶたくさんのうちわの中から、お気に入りの一枚を発掘!

眺めるだけでもかわいいけれど、祭りに持って行ったりすし飯をあおいだり、夏に限らず長く大切に使いたい。

ここで一句。「竹製の うちわであおぐ 風最高」

農文協 編
特集: 夏の養生ごはん