
2026年3月28日(土)、首都圏を中心に展開する生活協同組合のパルシステムと農文協が合同で、お米のセミナーを開催しました。
パルシステムの機関誌「のんびる」と「うかたま」読者を中心に、高校生から大人まで、会場とオンラインで約60人が参加。『いま知りたい お米と農家の話』をテキストに3人の執筆者が登壇し、米の価格や田んぼの価値、農家と消費者がつながる方法など話題は多岐にわたりました。3人の語りから、ほんの一部ですが、紹介します。
まとめ・写真=編集部 交流会写真=パルシステム
「うかたま」83号(2026年夏号)掲載

お米ジャーナリスト、ごはんソムリエ。今回のセミナーでは、消費者視点と農家をつなぐ役割を意識的に果たしてくれた。
お茶碗1杯54円
私はもともと全然農家と関係なくて、東京生まれの東京育ち。学校も全然農家と関係なかったんですけれども、結婚した夫が新潟県出身で、お米どころでした。で、結婚して初めて、「あら、こんなにお米の味が違うのってどういうこと?」って思って、町のお米屋さんにお米のことを聞きに行ったりした。そこが私のスタートです。
そんな私もみなさんと同じで、去年からのお米の価格はちょお~っと高いよねって思いました。5kg5000円はさすがにね。
では、その高いのが実際にどのくらいなのかっていう比較を、『いま知りたい お米と農家の話』の中でしています。5kg5000円超えって高いなと思うけれども、お茶碗1杯だと54円ぐらいですね。みんながよく飲むペットボトルのお茶なら、54円分は約1/3本、アイスだと2口分。高い安いって感覚は人それぞれだと思いますけれども、こうして考えてみるとよくわかりますよね。
お米の未来をつくるのは誰?
お米も資本主義社会の中にあるものだから、つくった人、それから流通してる人がちゃんと利益を持っていかないと成り立ちません。そして、お米は商品だと考えると、食べられることで初めて成り立つ、ということになります。
そうなのか。お米はつくって売るだけじゃ終わりにならなくて、私たちが食べてようやく成り立つっていうことは――、お米をつくるのにどのくらいのコストが必要か、という話は、じつは農家の話じゃなくて、私たちの話なんじゃないかなってことに気が付きます。
つまり、私たちがその価格をよしとして買う・買わない、もしくはこの農家さんのお米を買いたいなどというのは、消費者が決めてること。
となると――、お米の未来をつくるのは誰でしょう?
そうです。結局「食べ手」であるあなたも私も、お米の未来を担っています。

農家。新潟県上越市の山間部に12年前に新規就農。「米づくりの八十八」の記事(80号)にも登場。「米の直売価格は、生産費と自分の時給から計算して決めた。価格に根拠があるので、スーパーの価格に左右されない」と語った。
農家が減ると米が高くなる
今回の米騒動の問題点の本質は、やっぱり農家不足だというふうに私は思っています。
「農家が減った」とよくいいますが、それは「減らされてきた」ということがじつはあってですね。みなさんがお米を食べなくなってきたせいももちろんありますが、ほかにもこう、大きな資本・大きな経済の流れで「大規模化して安くつくってくれたら消費者は得するよね」という間違った誘導の中で、今でも農家は減らされ続けてるんじゃないかと思いますね。
でも実際農家が減ると、最終的にはお米は高くなると思ってください。大規模化するとお米は安くなると思ってる人が結構いるんですけど、それは勘違いで、高齢でも小さな農業でも不便なところでも一生懸命今日まで農業してきてくれた人のおかげで、お米は今の価格で収まっているんです。
これがもし、もっと大きく法人化が進んで、その法人が売りに出されて、どんどんどんどん買収が進んでいくと、我々の食べものを選ぶ権利っていうのはどんどん薄くなっていく。高くなっても文句も言えなくて、お金持ちしか食べられないものになってしまう。
そういうふうになったときに「百姓もっといればよかったなー」と思っても、もう手遅れだと思うんですよね。で、今ものすごいスピードで農家減ってますけれども、年齢の問題ですから、この先もものすごいスピードでいなくなります。今の人たちが踏ん張る、応援するのも大事だけど、やっぱり農家を増やしていかなくちゃいけない。ここをみなさん、じゃ、どうしたらいいのかを一緒に考えていただけたらと思います。

農家。福島県二本松市東和町。原発事故以降、外部からもオープンに人を受け入れながら、集落の力を高めてきた。この日は、おもむろに「案山子」と書いた札を取り出すと「読めるかい?」と笑いを誘い、「山の神様を案内する子ども」と収穫を喜び合うカカシの稲作文化を語ってくれた。
米を市場にまかせていいか?
彼岸過ぎると、米づくりの最初の仕事、塩水選(えんすいせん)が始まります。種モミを塩水で選ぶので塩水選といいます。塩水に種モミを入れて、比重が1.11とか1.13になると、卵が浮く。そのくらいの塩水にして種モミを入れると、悪い種モミは浮いて、充実したモミは沈む。いい種モミを選ぶこの仕事を4日前にやって、今年の米づくりも始まりました。
その種モミですが、コシヒカリは去年まで1kg550円とか600円だったのが、今年はなんと800~1000円です。種モミ代が1.5倍以上に跳ね上がりました。それから、肥料屋さんが言ってました。今年は夏から肥料が上がります。もうご覧の通りのイランの問題で、今からそんな感じです。農機具もどんどん上がっています。
農家には、こういう大変な状況が今起きています。我々は当然、種モミ代、苗代、肥料代、もろもろ積み重ねて生産費というのを出して、そこに時給いくらというのも含めると、1俵あたり2万5000円とか3万円とか、そういう価格が出ると思うんです。で、去年の米騒動のときから思ってたのは、とにかくマスコミも含めみんな米が高くなったと言いますけど、米が高いんではないと。先ほど、たにりりさんが言ったように、ご飯1杯50円そこそこですよ。それに比べて缶コーヒーいくらすんだ?ということです。
この30年間、働く市民のみなさんの給料が上がらなかった、ここに私は問題があると思っています。みなさんの給料が上がらない、だからいつも農産物は低価格で抑えられてきてしまった。それでみんなバタバタ農家をやめていった。それがこの20年間ではないか。私は現場で見ていてそう思いました。
ですから、やっぱり米は、市場まかせにはしないことが必要なのではないか。かつては食管制度がありました。農家にはちゃんと生産費を賄う、消費者には手頃な価格で供給する、こういう仕組みをちゃんと今つくらなくちゃと思います。
そういう意味で、価格については、もう一度この日本で、消費者と生産者みんなで話し合っていくってことがほんと大事かと思います。
「耕す市民」を増やす
とにかく農家だけでは農地を守りきれなくなっているので、耕作放棄地がいっぱいあるので、市民のみなさんが気軽に週末、畑、田んぼに通えるような環境をつくっていくのが必要かなと思いますね。
棚田オーナーっていうことで、私の集落では今10組のみなさんが、毎年田植え、草取り・草刈りなどに4~5回、少ない人でも3回は来ています。私は管理料をいただくだけで、できたお米は全部、玄米とか白米にして持ち帰ってもらっています。いわゆるオーナーっていうよりは、「耕す市民」をたくさん増やす。
これからは、集落だけでは守りきれない。市民も田んぼに関わる、そういう時代がやってきたと私は思います。

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