
非常食に、登山の携帯食に、普段のおかずにも使える。残ったご飯を無駄なく保存しおいしく食べるために昔から各家庭でつくられてきた「干し飯(ほしいい)」の魅力を探ります。
料理・レシピ=末時千賀子 写真=戸倉江里
『うかたま』83号(2026年夏号)掲載
ずっとつくり続けたい おいしい保存食「干し飯」
日本の元祖インスタント食
「干し飯」は、炊いた米を乾燥させた保存食のことで、炒ったり、お湯や水で戻したりして食べる。古くは「糒(ほしい・ほしいい)」「乾飯(かれい・かれいい)」などともいわれ、旅の携行食や戦時の兵糧として重宝されてきた。冷蔵・冷凍庫が普及する前までは、一般家庭でも残ったご飯を乾燥させて保存するのは米を無駄にしないための当たり前の知恵だった。
米は加水加熱するとでんぷんが糊化(アルファ化)し、消化しやすい、やわらかい状態になるが、冷めるにつれて水分を失ってかたくなり、ぼそぼそした食感に老化(ベータ化)する。干し飯は、この老化が起こる前に水分を飛ばして乾燥することで保存性を高めたものだ。非常食として広く浸透している「アルファ化米」は、乾燥処理こそ機械が用いられるが、仕組みは干し飯と同じ。干し飯はアルファ化米に比べるとゆるやかに乾燥されるため、戻したときの食感などは炊き立てご飯のようにならないが、ちゃんとやわらかくなり、米の甘みも感じる。
わざわざつくるほどおいしい
末時千賀子さんにとって干し飯は、小さいころに祖母や母を見て自然と学んだ、身近で当たり前の食べ物だったという。「昔はご飯をこぼしたり残したりすれば『穀(こく)を粗末にすると目がつぶれる』と怒られました。少量でも残ったご飯は干して大事にとっておいたんですよ」。
末時さんは今も日常的に干し飯をつくっているが、保存食や非常食としてだけでなく、「わざわざつくるもの」として進化しているという。「干し飯を揚げるとカリッとした食感になるので、サラダのクルトン代わりにしたり、おこげのあんかけ風にしたり。汁に入れると油揚げみたいなうま味とボリュームが出ておいしいんですよ」。
最近は、干し飯を知らない人も多く、紹介するとつくり方に興味を持ってくれる人も増えているそう。自宅で開いている料理教室や、地域の防災マルシェでも広めている。昔ながらのつくり方と、末時さんオリジナルの干し飯レシピを教わった。

教えてくれる人=末時千賀子さん
福岡県在住。20歳で香春町の農家の長男と結婚。おもてなし好きで、友人や親せきに料理をふるまううちに、自宅や公民館などで料理を教えるように。四季折々の食材を使った家庭料理や、身の回りのものを無駄にせずに使うアイデアを伝える。
干し飯をつくる

乾きやすく少量でもできる昔ながらの「粒状」と、料理に使いやすい「板状」の干し方を紹介します。
粒状:かさばらないので保存も便利。戻してご飯やおかゆとして食べることが多い。少量ずつ干せるので、余ったご飯をとりあえず干すときに向く。
板状:水などで戻しても食べられるが、戻さずそのままの形で揚げたり焼いたりして料理に使うことが多い。ザクザクした食感になり、食べ応えがある。
1 ご飯を広げる
〈粒状〉
バットにラップを敷く。
ご飯を冷まし、手に水をつけて薄く広げる。
金平糖ほどのサイズになるよう、できるだけバラバラにする。ラップに広げるとご飯がくっつかず、干し場所の移動もラク。
〈板状〉
まな板にラップを敷く。
炊き立てか、温めたご飯を広げ、その上にラップをかぶせて麺棒で2~3mmの厚さにのばす。
茶碗1杯で25×15cmほどになる。
のばしたらかぶせたラップは外す。

2 干す
ラップのままザルや干しかごにのせて天日で干す。
べたつかなくなったらラップを外し、カラカラになるまでさらに干す。
夏の暑い日なら1日で完全に干し上がる。
半乾きのときに使いやすい大きさにハサミでカットしておくと形がそろって見た目がきれい。
乾ききってから手で割ってもよい。

ご飯が透き通るくらい乾いたら完成!
3 保存する
密閉容器に入れて日の当たらないところで保管する。
ワインや焼酎の入っていた色つきの瓶や、密閉できる缶がおすすめ。
常温で何年も保存できる。
干し飯の食べ方あれこれ
保存がきくので非常時にはもちろん使えますが、水や牛乳で煮たり、油で揚げたりと、工夫次第で食べ方が広がります。
毎日の食卓に登場させたいおいしさです。
〈基本の戻し方〉
干し飯の2倍量の水で煮る。水なら1時間、湯なら30分ほど浸して戻してもよい。水分の加減でご飯っぽくもおかゆっぽくもなる。
水から煮ておかゆに
鍋に干し飯と、ひたひたからかぶる程度の水を入れて弱火にかける。
10分ほど煮て、米粒がふっくら戻ったら火を止める。
今回は梅干しの赤じそをのせた。
粘りが少ないので、だしや調味料を足せば雑炊になる。

牛乳とチーズでドリア風
鍋に干し飯と、ひたひたの牛乳を入れて……
ぼくたちのこと、知ってる?
くわしく見てみる